【書評】『 失敗の本質』| 敗戦からなにを学ぶか。
どうも。シャオです。
今回は中公文庫出版の『失敗の本質〜日本軍の組織論的研究〜』の内容の中で、筆者がとくに印象に残ったところを掻い摘んで紹介していきます。
本記事は戦争の良し悪しについて語るものではありません。
“近代組織”としての軍隊を題材に扱っていきます。
なぜ日本軍は合理性、効率性を欠いてしまったのか?
そして、大東亜戦争の日本軍の敗戦を反面教師にし、
今を生きる日本人として、私たちは「なにを」学びにできるかに焦点を当てていきます。
もくじ
6つの失敗例
この章では「考察」よりも「史実」を述べ、今後の内容の前知識をつけていきます。
ノモンハン事件-失敗の序曲–
日本陸軍初の敗戦です。
関東軍にとっては火遊びのような感覚で始めた戦いでした。
第一次世界大戦での戦闘の経験がなく、日本陸軍にとって初の本格的近代戦です。
対ソ連戦闘の準備不足、近代戦闘の知識不足が敗因でした。
ミッドウェー海戦-海戦のターニング・ポイント–
この戦いで日本軍は「赤城」、「加賀」、「蒼竜」、「飛竜」の主要空母4隻を失うことになります。
アメリカ海軍に暗号を解読され、奇襲を受けたことが痛手になりました。
当時、第一機動部隊は「練度」、「モラル」、「航空機の性能」等に関して世界最強といわれていました。
しかし守りになると脆く、また対空砲火や被弾後の防火対策、応急措置の訓練不足が露呈します。
アメリカ軍にとって「太平洋の戦局はこれで決した」ともいうべき戦いでした。
ガダルカナル作戦-陸戦のターニング・ポイント–
アメリカ軍にとってガダルカナル島は日本本土直撃という、長期戦略上の要所でした。
しかし日本軍中枢部にとってはガダルカナル島の”名前すら知らない”人がいる状況です。
ここで日本軍の戦略グランド・デザインの欠如が露呈します。
結果この戦闘以来、日本軍は守勢に立たされ続けることになりました。
インパール作戦-賭の失敗-
個人の保身による焦りと盲目化した杜撰な作戦の決行により、インパール作戦は失敗します。
“しなくてよかった”戦いを行い、
「人情」という人間関係重視、組織的緩和の優先をしてしまう、
日本軍の軍事的合理性の欠乏が露呈します。
レイテ海戦-自己認識の失敗-
レイテ海戦は世界の海戦史上で最大級、そして日本軍にとっては「起死回生」を賭けた戦いです。
有名な、戦艦「大和」、「武蔵」が散ったのもこの海戦です。
航空機、パイロット不足による戦力の差、
それを覆すことのできる通信システムを使った情報伝達を行うといった、
高度な作戦実行の必要性、
それらの認識が欠けていたことに敗因がありました。
沖縄戦-意思の不統一-
沖縄作戦のねらいが、
「本土決戦準備のための戦略持久にあるのか」
「航空決戦に寄与する攻勢作戦にあるのか」
で司令部と現地軍との作戦思想が割れました。
結果、現地軍の暴走を招き、アメリカ軍に無傷で上陸させることにつながりました。
失敗の本質
「戦略上」の失敗要因分析
「戦略上」の失敗要因は大きく分けて5つに分かれます。
- 「あいまいな戦略目的」(例: ガダルカナル作戦での戦略グランド・デザインの欠如)
- 中央部と実施部隊との作戦目的に対する価値観の不統一(例: 沖縄戦での現地軍の暴走)
- 短期的戦略志向(例: ハワイ真珠湾攻撃)
- 思考の硬直化(例: 戦略オプションの固定化、作戦計画の見直しをしない)
- 一点豪華主義による大量生産の難しさ(例: 戦艦大和、零戦)
「組織上」の失敗要因分析
「組織上」の失敗要因は大きく分けて4つに分かれます。
- 対人関係を優先する「日本的集団主義」(例: インパール作戦でしなくてよかった戦いを行う)
- 陸軍と海軍の対立による協力、統合作戦の展開の困難性
- 情報共有の欠如による戦略・戦術学習の怠慢化
- 過程>結果といった評価基準の不合理性
-失敗の教訓-
西南戦争、日清戦争、日露戦争の勝利体験で日本軍は戦略が固定化しました。
陸軍は白兵戦>砲撃戦、海軍は戦艦>航空機が例です。
戦略の固定により戦闘組織のアップデート(最新化)もされなくなりました。
根拠のない自信から人的資源、物的資源の現状理解にも努めなくなります。
また海軍と陸軍の対立で、
陸軍はソ連、海軍はアメリカ
と仮想敵国が異なることになり、組織の統合性も失います。
情報共有も困難になり、戦略の進化もできなくなりました。
これらのことから、
常に科学的、客観的に物事をみる、
組織の情報共有の重要さを認識するといった、
組織の環境適応による自己革新
の必要性がわかりました。
まとめ、読了後
成功体験に奢らず、常に現状を客観視し続ける重要性を、この一冊から学ぶことができました。
またゴール(目的)の選定、情報共有をしないことが回り回って、どのような結末に至るか、
その”怖さ”を痛感しました。
今を生きる日本人として、「前轍を踏まず」に先人の残した教訓を実践し、また後世に繋いでいけるか。
そのようなことを非常に考えさせられる一冊です。
記事の内容は抜粋したモノで、ところどころ内容が”飛び飛び”になっているかもしれません。。。
本著の詳しい内容が気になる方は是非ご一読ください。
一戦、一戦の流れがこと細やかに書かれていて、当時の情景が浮かぶようでした。
一読の甲斐ありです。
それでは、また。